原田 裕規 Yuki Harada

このたびの「心霊写真」展では、心霊写真と美術作家の作品を展示いたします。

美術作品はその基本的な性質の一つとして、鑑賞者へ何らかの知覚や体験を想起させるという一面を持っています。我々は心霊写真を目の前にしたとき――そしてそこに心霊の存在を見出した場合――見えないはずのイメージの生成を行います。他方、美術館やギャラリーで展示された作品を鑑賞することは、個人的な体験の生成を促します。この現象を、パラレルな構造を持つ2つの在り方として提示することは可能でしょうか。

優れた美術作品は時として作者の固有名を離れ、それ自体で「呪物性」や「礼拝性」を獲得します。心霊写真の持つ作者の不在性や呪物性は、この点でも優れた作品とパラレルな関係を結びます。立脚点の異なる2つの存在ですが、そこに共有している問題を認めることができるかもしれません。また、作品を鑑賞する際に対象を見据えて自己の体験を生成するプロセスは、そのまま作家の制作プロセスに対応します。さらに、制作活動でさえ、その延長にあるとも言えます。鑑賞は制作と表裏一体であり、制作者にとっては制作の一部として成立します。この事実は、誰であれ――その作品の作者ですら――避けることが出来ない事象として現前します。

「心霊写真」に対する「作品」には、人家や人の痕跡を描く画家の井上光太郎、自然と人工の狭間を切り取る写真家の百頭たけしの作品を展示いたします。この試みによって、どのような立場の鑑賞者にとっても、自己の知覚と認識が避けがたい問題として見出されることとなれば幸いです。

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Togetterまとめ

info
「心霊写真」展
会期 2012年9月14日(金) – 10月6日(土)
会場 22:00画廊(東京都小平市小川町1-776-18)
出品作家 井上光太郎、百頭たけし、心霊写真
企画 原田裕規、榮龍太朗
開廊時間 18:30 – 22:00

関連イベント
2012年9月14日(金)18:30 – 22:00 オープニングパーティー
2012年9月27日(木)18:30- トークイベント「松井勝正 × 榮龍太朗 × 原田裕規」
2012年9月28日(金)22:00 – 翌朝 オールナイトイベント「夜と芸術」
2012年10月6日(土)18:30 – 22:00 クロージングパーティー